友の会TAD Friendship

活動報告

会報プリズムvol.73より(2013年3月28日発行)他館見学会2012 芸術の秋 大原美術館と名画の旅

2013/03/28

芸術の秋 大原美術館と名画の旅 他館見学会に参加して

 母に誘われて、初めて参加した。若い頃から美術鑑賞は好きだったが、子育て以来、やや遠のいていた。また、ちょうど仕事で精神的に疲労困憊していた私にとって、この旅は心の滋養を願うものだった。予備知識を入れる余裕はなく、でも、久しぶりに純粋に芸術を味わいたいと思った。
 まず到着したのが、大阪の国立国際美術館。まだまだ発展中のキタ地区から連なる街中にフィットする近代的な外観だ。エル・グレコ展では、イエス・キリストやマリア、使徒たちを描いた絵を前に、なるべく絵のタイトルを見ずに、人物の表情やしぐさから、会話や心模様を想像して自分なりに吹き出しをつけて楽しんだ。使徒の一人ひとり、その主義主張から、どの使徒であるかを考えてからタイトルを見るようにし、結構当たっていて秘かにほくそ笑んだ。それほどまでに、人物の思いを表現する力量を感じさせる。宗教的題材を描く時には欠かせない信仰心、神というもののとらえ方もとてもストレートに伝わってくるように感じた。
 大阪を後にして宿泊地の倉敷に到着。夕食後、料亭から倉敷国際ホテルまでの帰路が、有名な美観地区の散策という粋な計らいになっており、皆それぞれのペースで世間話や夜間撮影を楽しみながら、クラシカルムードの夜道を歩んだ。また、ホテルには、大原美術館の創建者である大原孫三郎の息子、大原總一郎が棟方志功に依頼して創作された2枚一対の版画「大世界の柵」が飾られており、その迫力に圧倒され、満足のうちに眠りについた。

国立国際美術館の前で記念撮影

 2日目に訪ねた大原美術館の「受胎告知」でエル・グレコは締めとなったが、この絵画は以前観たダ・ヴィンチのものとは雰囲気が全く異なり、マリアが大天使に向かって「あら、お待ちしていましたわ」と言わんばかりの自信に満ち溢れた表情が印象的だった。とにもかくにも、この美術館は古今東西を問わず、選りすぐりの収蔵品があふれ、かなり心も満たされ、眠くなるほど。ピカソ、モネ、ゴーギャン、マチス…「あ、これ、美術の教科書に載ってた」という作品も多いので、ぜひ、若い世代は来観必須にしてほしいものだ。
 ラストの姫路市立美術館では「印象派」ならぬ「象徴派」の作品群を堪能。美術館のすぐ背後に、改修中の姫路城がユニークな覆いに囲われている姿を見たのも、ある意味、貴重な体験だった。
 母娘で参加の旅は、実は中学2年以来、何十年振り。バスの車窓から望む紅葉も美しく、ツアーガイドさんや学芸員の方のお心遣いも温かく、すべてが癒しのように感じられて、英気を養えた旅であった。感謝。
(一般会員 石川直子)