プログラム実施報告
おとな向け TADワークショップ 空の蜜をめぐって/カセットプラントワークショップ
2019/12/21
空の蜜をめぐって/カセットプラントワークショップ
実施日:2019年12月14日(土)
時 間:13:00~16:00
場 所:富山県美術館アトリエ、映像コーナー
講 師:山口啓介(やまぐち・けいすけ)さん
プログラム指導:山口作子(やまぐち・さくこ)さん
参加者数:22人(事前申込)
対 象:小学生以上
参加費:無料
協 力:富山県中央植物園(※落ちている草花を提供して頂きました)
内 容:美術家の山口啓介さんが手がけるカセットケースと樹液、ドライフラワーを使ったインスタレーション作品をワークショップ形式で制作しました。山口さんは企画展「瀧口修造/加納光於《海燕のセミオティク》2019」出品作家の加納光於さんと交流があり、加納さんからご推薦頂き本企画が実現しました。
※インスタレーションとは 作品を設置する場所や空間そのものを体験的に伝える芸術形式のこと。
活動のながれ
【植物を乾燥させる】
準備① シリカゲルを炒める
今回のワークショップでは、乾燥植物やドライフラワーを作るために粉末状のシリカゲルを使用しました。シリカゲルは、人に害の少ない乾燥剤です。お菓子や食品を包装している缶や袋の中でよく目にしているのではないでしょうか。まずは熱を加え、シリカゲル自体をよく乾燥させてから使用します。ホットプレートや電磁調理器を使い1斗缶(18ℓ)2缶分を準備しました。
準備② ドライフラワーづくり
密閉できる容器に、シリカゲルで5~10㎜程度の層をつくり、その上に植物を重ならないように配置していきます。全面に並べられたら、植物が見えなくなるまで上からシリカゲルをまぶします。そうしたら、またシリカゲルの上に植物を並べる作業を繰り返し行い、3層か4層程植物を埋め、容器がいっぱいになったら蓋を閉めて3日~7日間、乾燥させます。
準備③ ドライフラワー・乾燥植物ができました
乾燥した植物は、水分がなくなると大変もろくなるので、取り扱いには十分注意します。ざるに少しずつシリカゲルを流し込みながら1層ずつ植物を取り出しました。準備した植物は、購入したものもありますが、TADボランティアの皆さんやスタッフが育てている富山の植物を持ち寄りました。
【カセットケース】
準備① ケースの仕分け
山口さんから送って頂いたカセットケースは、状態の良いもの、少し傷がついているものなど色々なものが混ざっていたため、まずは仕分けしました。ワークショップでは、配置場所に応じて状態の違うカセットケースの並びを調整するため、事前のチェックや仕分けが重要になります。
準備② ケースを拭く
カセットケースは現在手に入り辛い材料なため、全国各地で開催されるワークショップ毎に使いまわしています。そのため、ケースを拭いて汚れを少なくしてから再利用し、作品にします。
【ワークショップ当日】
①山口啓介(やまぐち・けいすけ)さん
山口啓介さんは、1962年兵庫県生まれ、東京・兵庫在住の美術家です。油絵や版画の作品を手掛けているほか、立体作品や今回の様な大掛かりなプロジェクトも行っており、活動の幅は多岐にわたります。
②カセットプラントって、なあに?
カセットプラントは、無色透明なカセットケースの中に、乾燥させた植物と琥珀色の樹液を流し込んだパーツを多数並べてみせる山口啓介さんのインスタレーション作品です。映画「ジュラシック・パーク」は、琥珀内の恐竜の血液の発見をきっかけに話が展開していきます。山口さんは、映画内の琥珀が遺伝子を閉じ込め、後世に生命を蘇らせた点に着想を得てカセットプラントのインスタレーションを考えついたそうです。
③植物をケースにセットしよう
あらかじめ樹液を流し込み乾燥させたカセットケースに、参加者は、自由に植物を選んでセットしていきます。植物のセッティング方法にはルールがあります。
・1つのケース内に、1つの植物を収める。
・植物の茎はケースの対角線に配置する。
④カセットにテープを貼ろう
アトリエで10~20個程のケースに植物を入れたら、展示場所に移動します。展示場所にはカセットケースに貼りつける両面テープが置いてあり、竹ひごをピンセットの様に使いながらケースの裏面2点に貼り付けます。
⑤ガラス窓に貼り付けよう
周辺のカセットケースの様子を見ながらはりつけます。ガラス窓に貼りつけるケースの並びにもルールがあります。
・隣り合うケース内の茎を、ㇵの字やV型に並べる。
・隣り合う植物の色をなるべく補色になるようにする。
⑥完成
作品には、773個のカセットケースを使用しました。参加者の皆さんからは、「窓ガラスに貼りつけるカセットの並びを考えるのが楽しかった」「案外飽きずに作業できた」などの感想がありました。最後に山口さんからは、「カセットプラントの並びを考えることは絵を描く時の色や筆の運びの選択に似ている。インスタレーション作品でそこを体験してもらえてよかった」とのお言葉をいただきました。
【作品展示】
展示期間;2019年12月14日~2020年1月5日
本作は、ワークショップ参加者の皆さんに向けて、山口さんが事前にサンプルとして展示ケースにカセットプラントを貼りつけて制作されました。
また、これは企画展「瀧口修造/加納光於《海燕のセミオティク》2019」に出品された加納光於《アララットの船あるいは空の蜜》へのオマージュ作品です。
《空の蜜》設置場所:3階ラボ(アトリエ内)前
山状のかたちに設置されたこともあり、作品タイトルは《立山》になりました。ガラス窓沿いに展示しているため、昼夜の違いや天気によって様々な表情をみせるインスタレーション作品となりました。
《立山》設置場所:3階映像コーナー付近
集合写真
-瀧川エデュケーターのつぶやき―
ワークショップの手順はわかりやすく明快であったため、大人から子どもまで継続して集中できていたようでした。山口さんの落ち着いた優しい声がけがあったこともあり、終始和やかな時間となりました。
そして、実際のワークショップは3時間程の内容でしたが、実は植物を調達したり、乾燥させたりとスタッフによる下準備が満載でした。ドライフラワーづくりなどは楽しい作業行程でもあったので、いつの日か参加者の方々に体験してもらえればと思います。
ワークショップの企画・ナビゲーションをしてくださった山口啓介さん、プログラム準備のため、助言をしてくださった山口作子さん、植物を提供しドライフラワー制作を協力してくださった富山県中央植物園の中田政司園長さんにこの場を借りてお礼申し上げます。
ありがとうございました。