友の会TAD Friendship

活動報告

会報プリズムvol.76より(2014年11月25日発行)村上隆講演会「芸術家の誕生までの不思議―成田亨の場合―」に参加して

2014/11/25

村上隆講演会「芸術家の誕生までの不思議―成田亨の場合―」に参加して

 8月22日、企画展「成田亨 美術/特撮/怪獣―ウルトラマン創造の原点」の会場で、村上隆さんの講演が行われました。もじゃもじゃの髪にキャップをかぶり、ダボダボのコートに短パンという姿で登場。独特の雰囲気に会場内の期待が一気に高まりました。
 村上さんは、1962年東京生まれの52歳。漫画家秋本治や藤原カムイが卒業した本郷高等学校を卒業し、東京藝術大学大学院日本画博士課程修了。その後、クールジャパンの先駆けとなるアニメやポップカルチャーを取り入れたアーティスト集団カイカイキキを率い、世界各地の美術館で個展を開き、世界各地に収蔵作品のある芸術家です。
 成田亨さんとの出会いは、村上さんが20歳頃、ディズニーランドの造形物の制作現場でした。美大生の間での成田さんは「東宝のイケてないおっちゃん」という扱いでした。そんな人が実は、大ファンであるウルトラマンの美術担当だったことに衝撃を受け、当時、制作の合間や現場に向かう車内で話した芸術に対する思いが記憶に深く刻み込まれました。ウルトラマンや怪獣には、成田さんが意識していたであろう海外アーティストの彫刻や抽象の表現や成田さんの幼い頃受けた障がいが無意識に造形に影響したのではないかと、村上さんは考えました。提示された画像には、その影響があるといわざるを得ない説得力がありました。私たちが子どもの頃見ていた娯楽番組に、そんな背景があったなんて・・・。

講演会に先立って行われたギャラリートーク

 また、もう一つのテーマとして、成田さんの造形を芸術作品として読み解くべく経歴をチャート化し、芸術家完成の過程を分かりやすく解説されました。その過程とは、①芸術家としての賞賛、②さらなる美の追求、③周囲の無理解に悩む理不尽な状況、④良き理解者による作品の維持、が重要であるとの持論でした。それらを北大路魯山人やゴッホの経歴と比較し、芸術家完成への村上式ロードマップを示しました。そして、成田さんの人生と交わりながら、成田作品に魅了された少年時代を振り返りました。「自分の創作の原点は、そこにある」という言葉が印象的でした。
 会場は成田ファン、村上ファンの熱気に包まれ、最後まで熱心に耳を傾ける人々によって、惜しみない拍手が送られました。
(事務局 尾崎永治)