友の会TAD Friendship

活動報告

「チェコ・デザイン 100年の旅」スペシャル・ギャラリートーク(7月21日)

2019/09/12

企画展「チェコ・デザイン100年の旅」会期中、TADフレンドシップの鑑賞会を兼ねて開催されたスペシャル・ギャラリートーク《ガラス造形作家ヴァーツラフ先生と巡るチェコ・デザイン》に参加しました。
富山ガラス造形研究所准教授を務めておられるヴァーツラフ・レザーチュ氏を迎え、本郷 仁 同研究所主任教授の通訳と稲塚学芸員による案内で企画展の見どころを紹介していただきました。

オーストラリア・ハンガリー帝国、ドイツ、ソヴィエトによる支配と独立、ビロード革命…チェコ共和国は様々な時代を経て現在に至る歴史を持つことがあらためてわかりました。
解説中に何度も“社会主義だった間は…”と体制について語られていたところが印象深かったです。
ガラス製品や木製品など素材をいかした日用品は時代ごとの世相を反映していましたが、それらからは堅実さや素朴な温かみが伝わってきました。
先生のすすめる作品のひとつとしてあげられたキュビスムの影響を受けた黒褐色の椅子は存在感を放っていました。木の質感をいかしつつ見た目は直線的で非常にシンプルですが、細部は非常に手が込んでいて脚の部分のデザインが大胆でした。
160年もガラス製品を作り続けるモーゼル社。こちらのコーナーでは綺麗な色合いの作品が展示されており、カリクリスタルというガラスの表面に彫刻を施したり、色ガラスそのものに特徴がある製品で知られるそうです。
デザインや制作などの工程別に分業していたものを、ひとりの作家が納得がいくよう全ての工程を担うことで、より美しくクオリティの高いものが出来るようになったとのこと。

子ども用のおもちゃたちのコーナーはレトロで可愛いものばかりでした。中にはまず作家自身の子どもたちを楽しませてみてOKなら生産する、というような制作過程をとるものもあるとか。見る、触れて形が変わる、動く、膨らます、抱きつく、乗っかるetc、おもちゃを通じて得られる様々な体感からアナログの面白さ、あたたかさを感じとる。こういったところは先生のデザインにも影響を与えているそうです。

ガラス造形作家のヴァーツラフ先生ならではの視点と解説でチェコには様々な時代を経つつも確かな技術や伝統が現代にまで引き継がれているのだと感じました。今回はチェコデザインの100年を知ることが出来るよい機会となりました。

富山県美友の会事務局 宮田美佐子